「 サプライズ・ボックス 」
無花果(ペンネーム)
夏を肌で感じはじめる7月初旬。
私たちは夫婦は結婚1周年を迎えた。
当たり前のことなのだけれど、生活を共にするということは
付き合っていたときの気持ちとはまた違う。
生活の中でおこる些細なことで揉めたこともあったし、
全てを知っていると思っていたのに知らないこともあった。
その反面、2人でしかつくりだせない喜びもあったし、
1人暮らしでは気づけなかった楽しみも見い出せた。
いろんな感情がぐるぐると回ったり、止まったり、流れたりした
1年だったなぁ・・・
そんな感慨にふけっていたときのこと。
結婚式で友人のスピーチをしてくれた高校の親友から
「1周年おめでとう!」という言葉と共に、
プレゼントをいただいた。
小さな黄色い箱。
銀色のリボンをほどき、ふたを開けると思わず心臓がドキリとした。
それはお花畑だった。
四角の箱にみっちりと数種類のお花が彩りよく敷き詰められている。黄色と白のバラを中心に、緑もポイントに入り本当に美しい。そっと鼻を近づけると、初夏にぴったりのさわやかな香りがふわりと漂った。寿命は4、5日ほどという。
なんて繊細で、贅沢な贈り物だろう。
心がパッと華やかになり、嬉しくてたまらなかった。
なんだか、結婚式から1年経ってもう一度ブーケをもらったような気分だ。
それは箱に秘められた驚きの花束。
友情という愛に溢れた花束。
数日後、お花は少しずつ枯れていってしまった。
しかし、箱を開けた時の喜びと友人の優しさは
よりはっきりとした輪郭をもって私の心に息づいている。
これから数十年の結婚生活を考えると、まだ始まったばかりのわたしたち。まだ開けられていない未知の箱がいくつもあるだろう。
けれども、箱の中がどんな形であっても最後にはこの花のように美しく咲き誇れるよう、2人で手をとり合って進んでいこう。
そう決意させてくれる強さを、幸せな驚きに満ちた贈り物から、私はもらった。