第 3454 号2015.04.05
「 春の家さがし 」
矢崎 緑(三鷹市)
昨年秋に、40手前で思いがけず娘を授かり、この春は家探しにあわただしい。これまでの夫婦二人の生活と、子供と三人での生活では家に求めるものがまったく異なり、慣れない子供とのこれからの生活に思いをはせつつ、今まで考えたこともなかった「どんな家が子供の成長する場所として理想的な環境なのか」を思案している。
共働きとはいえ、理想をすべてかなえるような立地・間取りの家を手に入れることは我が家では経済的に難しい。そこでがっかりしないで、いかに楽しく前向きに家探しをするかが、家探しと同じくらい工夫と努力がいる気がする。
自分は子供部屋がなかったので、娘には小さくとも専用の部屋を設けてあげたい。狭い家でも、日当たりや風通しがよく、緑が多ければすがすがしく生活できるだろう。店が多くにぎやかな町に住めれば楽しいが、そんなエリアの家ならば予算的には狭いか古いかのいずれかになる。緑の多い郊外もよいが、都心への通勤地獄が恐ろしい。終の棲家を最初の1回の購入で決めるのは前途多難、いつもは仲のよい私たち夫婦も疲労困憊、不機嫌になることが増えてきた(すべてはもっとお金があれば解決するのだが!)。
しかし、春の陽気に包まれながらの家探しは、思いも寄らなかった新しい家族とのこれからの暮らしを彷彿とさせ、なんとも心弾む思いである。夫婦二人で十分幸せ、このまま楽しく二人で暮らしたいとすら思っていたが、生きることに一生懸命な幼い命をそばで見守ることは、今まで知ることのなかった喜びであった。
春は家探しをする人の多い季節であると思うが、今年は私たちも新鮮な気持ちでその仲間に加わることができて、何とも初々しい気分である。