第 3452 号2015.03.22
「 高校総括 」
佐藤 弘紀(板橋区)
深緑の大地に、縦横無尽に走る白線。
その白線の一端に立ちながら、僕は黄色いボールをバウンドさせる。
3回突いてからボールをラケットの根元に添える。
これが、僕がサーブを打つ時のいつもの儀式だった。
対角線上を睨むように見れば、こちらへと向かい合う黒のユニフォーム。息を整えラケットを構える僕の脳裏に、この6年間の記憶が流れていく。
初めてラケットを握ったとき。初めて試合で勝ったとき。初めて試合で負けたとき。
一つとして無駄な時間は過ごさなかった、とは思わない。それでも、それなりに仲間たちと努力してきたと言える時間ではあった。
視線を空へと逸らしながら、左手を振り上げる。黄球が空へと登っていく。
トロフィーのようなポーズを取った僕は、その瞬間に思い出していた。
中学最後の大会、僕は相手のマッチポイントで予感めいたものを感じていた。
サーブを打つ瞬間に、相手の打球が僕の届かないところへと飛んでいく映像が見えた気がした。
映像と全く同じ、とは行かなかったが、結局そのポイントで決着をつけられた事を記憶している。
高校最後の試合も同じように終わるのか。また、中学と同じようにあっけなく?
振り上げた黄球を、力いっぱい対角線に打ち込む。相手が打ち返してくるのが見えた。速い。
下がりながら力いっぱい打った打球はネットに当たり、そして僕側のコートに落ちた。
それで終わりだった。あっけなかったが、それが全てだった。高校最後の大会が、そして高校生活のほとんどを占めていた僕の部活が、終わった。
僕は人より努力したとは思わない。ごくごく平凡なテニス選手だった。それでも、人並みに悔しがることは許されるだろうか?
中学と違い、僕は頬を伝う涙を感じていた。