第 3450 号2015.03.08
「 過去につながる電話 」
宇岐 知子(ペンネーム)
「風の電話」の話を聞いたことがあるだろうか。
東日本大震災で大きな被害があった岩手県大槌町にあるそうだ。
家族や知り合いを亡くした人が、この電話ボックスから、亡くなった人に思いを語りかける。今は、安らかにすごしていますか。
伝えたいことがありますか。
返事はないけれど、見えない電話線の向こうで、大切な人はきっと、やさしい目をして聞いてくれているような気がする。
過去につながる電話や、未来につながる電話も、あればいいと思う。
過去につながる電話があったら、母にかけてみたい。
母が亡くなって十二年になる。元気だった頃の母に、話したい。
行きたいところはある?食べたいものはある?私にしてほしいことはなに?
母さんは、しあわせですか?そして、私と一緒に暮らして、よかったと思っていてくれていますか?
もっともっと、いろんなことをしてあげればよかったね。
ごめんね。
未来の私からの電話に、母は、どう返事をするだろう。