第 3444 号2015.01.25
「 食卓 」
匿名
20年間使っていたダイニングテーブルを買い換えることにした。
子どもが小さかった頃は、不自由を感じない大きさであったが、
二人の息子が大きくなるにつれ、テーブルが小さくなった。
20年間、家族団らんの中心であったダイニングテーブル。
毎朝、そこから始まり、夜になれば、家族が戻ってくる場。
そうは言っても、家族みんなで楽しく食べた思い出ばかりではない。
テーブルの下での足の蹴りあいの兄弟げんか、食事の途中で夫婦険悪ムードの時もあり、今となっては、切ない苦い思い出もあるが、家族の歴史を一番知っている場であろう。
昨今、「食」は人をつくると言われ、食育の重要性が叫ばれている。家族そろって囲む食卓は、こころもからだも成長させる場であろう。
そして、そこに並ぶ料理や「いただきます」「ごちそうさま」のこころ、礼儀、栄養の話、家族を大切に思うメッセージ・・・子ども達に、家族に、伝えられたであろうか。反省ばかりである。
新しいダイニングテーブルが来た。
以前の倍くらいの大きさの、真新しいテーブルの前に一人掛けてみた。
子どもが成長し、帰宅時間もまちまちとなり、家族そろっての食事の頻度は少なくなり、大きいテーブルは妙にがらんと大きく感じ、少し寂しくなった。
十数年前、まだ上手に使えないスプーンを得意げに持ち、テーブルの上をたたきながら夢中で離乳食を食べていた息子の食事風景や、学校での出来事に悔し泣きをしながら、それでも食べ続けていた幼い頃の姿が走馬灯のように思い出された。
そうだ、家族そろっての食事の回数は少なくなっても、このダイニングテーブルでの食をとおした新たな家族の歴史、楽しい思い出をつくっていこう。
さあ、今日の夕飯は何にしようかな。家族を元気にできる献立を作ろう。