第 3439 号2014.12.21
「 黒革の手帳 」
撫子(ペンネーム)
黒革の手帳という小説があったな、と思いながら、必死で手帳を探しまくった。昨夜の自宅でのことだ。ハンドバックの中を何度も見たが見当たらない。引き出し、買い物かご、玄関の棚など、何度見たことだろう。「私の手帳、見かけなかった?」と夫に聞きたいところだが、ぐっとこらえる。私の探し物は日常茶飯事で、「どこに置いたんだ、ちゃんとしまい場所を決めないからだ!」とそのたびに怒られているからだ。
毎年年末になると業者から送られてくる黒革の手帳。表紙には年号と名前が、金箔で押された上等品だ。夫は使わないというので、毎年私がもらっている。もう20冊にもなろうか。小説・黒革の手帳は、一億円以上も横領した女性の秘密のメモだが、私のだって大切な個人情報がどっさりと記されているのだ。スケジュール、日記欄、親類や知人の住所録、預金通帳の番号や、年金番号等など。スケジュールは今年も余すところわずかなので、まあヨシとしても、他のものが心配でならなかった。
もう15年以上も前のことだが、アメリカのコロラドにスキーに行ったときこの手帳をなくしてしまった。日本に帰り、メールチェックをしていたら、知らない人から「あなたの黒いノートを拾いました。送りますので住所を知らせてください」と英文であった。手帳のメールアドレスを頼りに連絡をくれて、はるばる我が手に戻ってきた。立ち寄った本屋さんで、落としたらしかった。
あれこれ考えていると、電話が鳴った。「○○書店でございます。黒い手帳を落とされませんでしたか?事務室でお預かりしております。」昨日寄った本屋さんだった。またも本屋さんで見つかって本当にラッキーだった。