第 3383 号2013.11.24
「 山魂と共に 」
甲斐 歩(ペンネーム)
山里まで色づき、盆地は今まさに錦繍に染まっています。
行ったことも見たことも無い、知らない世界の多い私ですが、この地に生まれ、この地で山々に囲まれて育ち、生きて行ける幸せに感謝しています。
私は今パソコンに向かっていますが、窓外に目を移すと、南アルプスの頂きがうっすらと白銀におおわれています。「ああ、雪が降ったんだ~・・・」と。
今頃の季節になると、麓が雨の時でも山は雪になります。季節が冬へ移ろうこの時期、山頂は雪景色で山腹から麓へ向かって錦繍の趣きが楽しめます。
早寝早起きが習慣の私は、時々刻々と変化する早朝の山容に魅せられ、4時ころに目覚め、5時ころにはテラスに出ます。薄明が始まると、南アルプスの峰々は、麓より一足早く朝陽を浴びて、薄紅色に染まります。東に目を移すと、黎明の空とは対照的に、山魂は稜線から麓まで墨一色に覆われます。
街が眠りから醒める束の間のドラマに感動しつつ、自らの心を清め、新しい一日が静穏でありますようにと祈ります。
盆地を囲む山々は、本格的な冬を前に、独立峰の霊峰富士、外輪山の南アルプス(赤石山脈)、八ヶ岳連峰、秩父連山などが一足早く雪化粧を始め、次いで内輪山の巨摩山地(駒ケ岳山脈)の甲斐駒ケ岳や鳳凰三山がうっすら白銀に染まって行きます。見延山脈や御坂山魂の頂きに雪が降るようになると、麓も最低気温が氷点下5度、6度の日が連日になり、盆地を幾重にも囲む山々は、しばし深い静寂に包まれ、新しい季節の訪れを待ちます・・・。