第 3373 号2013.09.15
「 伝えたい言葉とこころ 」
甲斐 歩(ペンネーム)
昼過ぎから降り出した雨も夕刻には上がり、山際の雲の切れ間から明るく大きな月が顔を覗かせ、夕闇に染まりだした街を照らした。「ああ、満月だ~・・・」二日前にお団子を食べたことを、すっかり忘れていた。
月は約29日の周期で満ち欠けを繰り返し、その時々に叶った、美しい呼び名がつけられている。
月齢0日が新月(朔月:月立つ)。翌日が二日月と呼ばれ、今にも消えてしまいそうな細い月を、私は糸月と呼んでいる。
月齢2日が三日月。月齢7.5日は半月になり上弦の月。この頃の月を「宵月」と呼ぶ。9日が十日夜(とうかんや)、月齢12日が十三夜。翌日の月を待宵月(まよいづき)・小望月(こもちづき)と呼び、月齢14日が満月になり十五夜・望月(もちづき)の名で親しまれている。
歳時記では、旧暦の8月の十五夜を仲秋の名月(芋名月)。9月の十三夜を栗名月(豆名月)と呼び、月見の習慣が定着している。古来より「片月見をしてはいけない」と言われ両方見るのが正しいとされている。
十五夜を境に、月は日に日に欠けて行く。15日はためらいながら出る月の意味から十六夜(いざよい)と呼ばれ、翌日の月を立待月(たちまちづき)、月齢17日を居待月(いまちづき)。18日頃は、段々と月の出が遅くなり、寝て待つことから寝待月(ねまちづき)とか臥待月(ふしまちづき)。19日には夜更けに出るので更待月(ふけまちづき)。この頃から26日頃までの月のことを「有明の月」と呼ぶ。後の三日月を最後に、29には月が隠れる意味から晦(つごもり)と呼ばれている。
自然現象を畏敬と感謝の気持ちで受け止め、その時々に叶った歳時記を楽しむ、日本の伝統。これからも、美しい言葉とこころを守り伝えて行きたいものです。