第 3368 号2013.08.11
「 フランス人のお盆明け 」
疋田 祥世(埼玉県和光市)
仕事場に、フランス人のジャンさん(26歳)が訪れたのは去る6月のこと。
「ええっと、こんにちわ…じゃなくってボンジュール!」という私のぎこちない挨拶に、彼は「どうぞよろしくお願いいたします。」と丁寧にお辞儀して返してくれた。それは流暢な日本語を操り、佇まいもどこか日本的。この絶妙な雰囲気は何なのだろうと考えていると、彼の仕草に目が留まった。「いえいえ」「すみません」という遠慮がちな仕草を自然にこなしているのである。私のイメージしてきたフランス人は、我が強くて、自国を愛していて、英語に対抗してフランス語しか使わない。しかし目の前の線の細い男性はどうだろう。英語どころか日本語を操り、遠慮までしている!!既成のフランス人のイメージが、ガラガラと音を立て崩れ去っていった。改めて、ジャンさんの遠慮がちな仕草に「これは何とも興味深いなあ。」なんてばかなことを思いつつ、異国の文化をこれほどまでにマスターする彼に尊敬の念を感じた。
8月になって、私も、もちろんジャンさんもバケーションと縁遠い場所で働いていた。
何となくフランス人の働き方について興味を持った私は、「フランス人はこんなに休まずに働きますか?」と聞いてみた。彼曰く、「フランス人の昼休みは2時間、適当に働いて、定時にはきっちり帰る、バケーションはめちゃくちゃ長い」らしい。「じゃあ、やっぱりジャンさんはフランスで働きたいですか?」と聞くと、「いえ、日本が好きだから」満面の笑み。毎日自転車で浅草を走り出社して、一生懸命に働く彼はとってもチャーミングだ。帰りがけに、次会えるのはいつでしょうかと声をかけると「お盆明けには」。「お盆明け!?」フランス人の口から盆明けという言葉を聞くなんて夢にも思わなかった。国際都市、日本。将来は、安泰だ。