「 私の制服 」
桜宮 弘子(ペンネーム)
突然思いついて、4年前に亡くなった母の和箪笥の整理を始めました。沢山と言うほどではないけれど、昔の人らしく、折々に着る着物が残っていました。たとう紙を開き、最初に出てきたのは、50年以上も前に私の高校の入学式に着た着物でした。きちんと手入れがされて、いつでも使用可能な状態になっていました。
息子の(孫)の結婚式に着ていた色留袖は、「そのうち貴方にあげる」と言っていたもので、結局、晩年の6年を暮らした私の元に置いていってしまいました。大島紬等の普段使いの着物も、見ただけでその時々の母の姿が蘇ってきました。
どなたか着て下さる方いれば差し上げてもと思って始めた整理だったけれど、着物を並べてゆくうちにその気は失せて、何とか自分が着られるようにしたいと思い始めていました。暫く、着物の柄や色を眺めているうちにピンと閃きました。「お母さん、着物のままでは着られないけど、私が着られるようにポンチョに直して着ることにするからね」母はきっと「もったいないそのまま着ればいいのに…」と言うだろうけど「私、着物似合わないし、着物地のポンチョを私の制服にしようと思うから許してください。」普通ならば、スーツやワンピースにすることの方が多いかと思うけれど、もう流行を追う年齢でもないから、簡単にリメイクが出来て、着易く、パンツにもスカートにも合わせられるポンチョにしておけば、きっと、ずーっと着られると思います。この際だから、結婚する時に母が見立ててくれた私の着物も直そうと思います。それぞれの素材と色とりどりのポンチョは、きっと多彩な表情で見せてくれると思います。考えただけで、楽しくなってきました。母が若い時に着た物も、晩年着ていた物もみんな私の制服になって、一緒に歳を重ねて行きます。きっと温かい気持ちで過ごして行けます。