第 3362 号2013.06.30
「 「おまけ」をありがとう 」
入江 由希子(ペンネーム)
「おまけ」がついてくるというと、何か嬉しくなってしまうのは子供だけではないだろう。大人になっても「おまけ」の魅力には抗えないものがある。
さて、私が手にしたのは棚ぼたの、まったく予期しないものだった。
就職してひとり暮らしを始めるという息子を「もう二度と一緒に住むことはないだろう。」と送り出したわが家にあまりの激務もあってしばらく戻りたいと帰ってきて早2年が過ぎた。
振り返ってみれば、学生時代と変わらず、朝は早く、帰りは遅い息子だから交わす言葉よりも、「今から帰ります。」「今日は遅くなったから食事をすませてきます。」なんていうメールの方が多かったかもしれないと苦笑する。でも、「おはよう。」「行って来ます。」「気をつけて行ってらっしゃい。」、「ただいま。」「お帰りなさい。」というお互いに交わす短い言葉がある毎日、途絶えていたケーキやパン作りにもまた楽しみを見出せたこと、お弁当作りも張り合いがあるものだったと思うと、暮らしの中の何気ない小さなことに大事な宝物が隠されていることに気がついたのは、やはり「おまけ」の力かしら?と思う。
息子がくれたカードに「家にいると、いつまでも子供なんだな、と思います。」とあった。そして、「これからも末永くよろしくお願いします。」と。この思いは親から子への思いとも言える。
この春、息子は本当にこの家を出て行く日を迎える。
ステキな彼女とめぐり会って結婚することになった。この二年という「おまけ」の日々は終わるけれど、私の中では大きな宝物となった。