第 3358 号2013.06.02
「 おぼろ月 」
佐藤 悠太郎(ペンネーム)
6月のある夜、住宅地を歩いていて、
ふと、天を見上げると
月にかさが掛って 何とも幻想的な感じがした。
仕事が終って、気を抜いた時だったから
その月が 心を癒した。
普段には、まっすぐ前を向いて 心身共に
仕事に邁進する自分だから
力が抜けて 空を見上げる事もない。
先程、友と会って立ち話をした。
今の時代 信頼できるひとがいる、のが
幸せな境遇だと、人生に感謝した。
月は、ぼんやりして、目に涙が溜まっているのか、
と錯覚さえした。
妻を病で亡くし、7年7ヶ月。
漸く 心も落ち着きを取り戻し、でも
そのおぼろ月が 笑顔の妻のこころにふと感じられて……。
私は、暫く、夜空を見上げて
妻の名を 2~3回呟いていたのだった。