「 親友の結婚 」
疋田祥世(埼玉県和光市)
先月、井之頭公園の中にある喫茶店で親友とお茶をしていた時のこと。彼女は「来年には結婚する」と言ってカフェラテを一口飲んだ。私は前々から結婚前提でお付き合いしていると知っていたので「おめでとう」と返した。しかし、彼女が見せたのは、少し翳りのある笑顔。尋ねると「最近ケンカが絶えなくて、ずっと一緒にいると疲れちゃう気がする」のだそうだ。「じゃあ、今度3人でご飯を一緒に食べない?」と私が提案すると、「じゃあ彼を見て、感じたところを素直に教えて」と彼女は答えた。私は「もちろん」とうなずいてみせ、そのあと2人で池の周りを一周して帰ったのだった。
そして昨日、3人は新宿の居酒屋に集合した。親友の彼氏は、精悍な青年と呼ぶのがふさわしい、きりりとした人だった。意外だったのは、外見に反して声が高いことと、他人の私を前にしても私の親友への愛情を隠さず言葉にすることくらいで、あとは話に聞いていた通りのおだやかな人である。私たちは何気ない会話をして、ありきたりの居酒屋メニューを頼んだ。
カップルというのは、似た者同士がくっつくのか、それともくっついてから似てくるのかわからないけど、本当によく似ている。顔が似ている場合もあるけれど、身にまとう雰囲気が似ているのだと感じている。
親友のカップルも、一見して小柄な親友と大柄の彼氏では全然似ていないはずなのに、おっとりした口調、首の傾け方、歩き方…小さな仕草ひとつひとつがシンクロしていて、見ているうちにお似合いだなあと思えてきた。
これからの人生を共に歩むなら、同じ歩幅で歩いてゆける人がいい。私は親友の結婚式を想像しながら二人を見ていた。もちろん親友たちは気づいていなかったが。
私は帰りの地下鉄の中で「すごくお似合いだったよ。結婚式を楽しみにしている」とメールした。パーティードレスが入るようにダイエットしなくちゃいけないかもと思いながら。