第 3353 号2013.04.28
「 観覧車 」
ハマッ子(ペンネーム)
横浜の新しい観光名所になっている「みなとみらい地区」を巡る観光バス、「赤いくつ号」に妻と乗った。ひと乗り100円という手軽な料金で見どころを巡ってくれる。
桜木町駅を出てぐるりと一回りすると、正面に巨大な観覧車が立ち現れてきた。年配の運転手さんが説明する。「前方に大きな観覧車が見えてきました。直径が100メートルもあって、コスモ・クロックの愛称で親しまれています。最近は特に若い人たちの間で人気のデートスポットになっています。キャビンがてっぺんに差し掛かった時に告白すると成功率が高いと評判です。ご乗車の若い方」とここで言葉を切り、バックミラーで車内をうかがう様子。そして「若い方もお気持ちの若い方も、一度お試しになっってはいかがでしょう」とつないだ。
ウィークデイの昼間である。乗客は私どもを含めて中高年ばかりだ。運転手さんの思わぬ説明に、声にこそ出さなかったが、みなフフっと笑みをもらし、何組かは顔を見合わせていた。観覧車の横を通る時、乗客は一斉に外を見上げながら、「大きいわね」と驚きの声を上げた。
私は「確かに四五十年若ければ、そんなこともあるかも知れん」と内心思い、楽しい気分にさせられた。こんど本当に妻と観覧車に乗ってみようか。
このなかなか粋な運転手さんは、多分横浜市の交通局を定年退職されて、嘱託か何かの身分で赤い靴号を運転しているのではないかと想像した。