「 生まれ変わっても・・・ 」
coco(ペンネーム)
「やっぱりカレーは2日目が美味しいよね」一晩寝かせた分の美味しさ。レードルで鍋の中をかき混ぜながらふと思った。 そい言えば、果物でも“追熟”と言って収穫してからしばらく日をおくと更に美味しくなる。味噌でもそうだ。作り立てよりも一定期間おいた方が美味しい。老舗の秘伝のタレともなれば何十年もの継ぎ足し…。
あっという間に気がつけば二十年目の結婚生活。カフェでお茶をしていると、隣から弾んだ会話が聞こえてくる。更にその向こうの席からも楽しそうな笑い声が聞こえる。なのに、自分たちの席ではお互いに好みの本を片手に静かなものだ。
夫婦は長く一緒に暮らしていると空気のような存在になると誰かが言っていた。居て当たり前の存在である。楽しい事ばかりではなく、波風はそれなりにある。そんなものも全部ひっくるめて夫婦となっていくのだろうか…。つい目新しいものに興味を惹かれがちであるが、時間をかけて熟成したものだけが持つ“旨み”のような何かが生まれていることを忘れないでいたいと思う。
「今度生まれ変わっても、今のご主人とまた結婚しますか?」随分前に後輩のFさんから訊かれたことがある。にやりとして首を横に振ったら「えーそうなんですか!?がっかり…」当時、独身だった彼女は周囲の既婚者に同じ質問をしていて、誰一人「はい」と答えた人がいない!信じられない!と随分落胆していた。
先日、子育て真っ最中のFさんに久しぶりに会った。私はあの同じ質問を既婚者となったFさんにしてみた。すると、体をくねらせて少しバツが悪そうに首を横に振った。
「ほ~らね!」私は(やっとわかったか)と言わんばかりに彼女を指差した。「だって…」苦笑いする彼女を見て、私は可笑しくなってふき出した。
現実と理想の狭間…何とも不思議な奥深い夫婦という関係である。