第 3341 号2013.02.03
「 春光逍遙 」
森 好文(日野市)
立春が過ぎたというのに寒い日が続くが、日差しは明るさを増し、本格的な春が近付いているようだ。季節の変わり目には自然の営みの微妙な変化が覗えるので、散策の楽しみがある。
ちょうど2月16日からは所得申告書の受付が開始されているので、日野税務署に徒歩で行き、早春の気配をも確かめてみよう。
南平の高台を下って淺川べりの土手を歩く。川風が冷たいが、それもかえって気持ちが良い。例年この頃には咲いている犬ふぐりは、未だどこにも見当たらない。やはり季節は遅れているのだ。
だが、枯れたように見える古草には少し緑が兆している。陽光は大地より萌え出る草の芽にも古草にも、公平に恵みを与えてくれるのだ。
古草もあまねき光浴びてをり
淺川土手から上がり、左に入り、平坦な道を歩く。この辺りは畑や田が残っている場所であり、日野市の中でも農村の面影が覗える。そこらには田に引き込む用水が縦横に走っている。よく見ると、用水の底には藻が茂っており、水の流れに揺れている。藻が揺れる度に、水面も変化してキラキラ良く光る。初春の水は明るい日差しを喜んで、藻と戯れながら流れているのだ。
日矢受けて藻と戯れる春の水
田畑の道を抜けて高幡橋に出る。そこから税務署はすぐである。申告を済ませて帰路につく。大事な用件を済ませて、気持ちも楽である。では、高幡不動に寄ってお参りをしていこう。境内は未だ閑散としているが、朝の読経の声が響いている。聞くだけでも心が洗われ清々しい気分になる。山門を入り左手に句碑の並んでいる場所がある。
昨夜降った雪が未だ消えず、薄っすらと芭蕉句碑にかかっている。
これも、早春の景物である。
春の雪軽く被きて芭蕉句碑