「 贅沢な一日 」
藤 りか(ペンネーム)
目覚ましに6時に叩き起こされて、ごみ集積所に行く、そう今日はごみの分別日、ご近所さんとごみを分別して回収の車にせっせと運ぶ。
要領が悪いというか、要領が良すぎるのかおしゃべりばかりして働かないいつもの奥さまには困る。
黙々と作業を終えて家についたのは7時。初雪も僅かに1.2cmほどでさして困るほどのこともない。
かじかむ手指をあたためいつもより早めの朝食にした、コーヒーの香りに和む。私の日課は朝の化粧から始まるのだが、今日はちと狂ってしまった、ごみ分別に行く時点で小雨まじりだったのでどうせ濡れるからと化粧もせず、ダウンジャッケットにビニール合羽とあいなり、加えて素顔を他人にみられるのはどうも嫌なものだが、そうせざるを得なかった。
朝食をすませると、なんだかけだるい、昨夜の睡眠時間を数えるとわずか4時間しか眠っていないせいだ。
今日は他に予定が入っていないことをいいことに、まだ温いベッドにまたもぐりこむ。うつらうつらしてはまた眠りこけ、だらだらと過ごすことになった。せかせかした毎日がつづいていたから雪の日ぐらいは休もうか。と、自分に言い聞かせてみる。
そして好きな本を読んだり、日記を書いたり、合い間にメールを確認したりと、気ままな時間がとれた。なんと贅沢かとも思う。こんな日はもう何年も味わったことがないような気がする。幸いなことに電話も2本あっただけ、でも1本は「こちらは資産運用のエキスパート・・・」ここで私はガチャリと切った、その声はテープだとわかったから。なにがエキスパートだ、と心は少々いらつきながら。この類の電話はほんとうに迷惑だ、吹っ切るように洗濯機を回したのは夕刻だった。ふと、鏡をのぞき込み、あっ!素顔!なんとだらしないことかとも思うが、まあいいや今日は命の洗濯もできたし贅沢な一日が過ごせたからと鏡の自分に言い聞かせた。