第 3332 号2012.12.02
「 何型? 」
吉野 真由美(所沢市)
「A型だったよね?」仕事中、次長が私に唐突に聞いてきた。いきなりの質問に戸惑いながら私は
「いいえ、違います」と答えた。
すると次長が意外そうな顔をして
「じゃあ、B型?」と聞いてきたので
「いいえ」と私は言った。
「えっ、じゃあ何型?」と更に次長はしつこく尋ねてくる。何故そんなことを今聞いてくるのだろう?私は不審に思ったが「AB型です」とキッパリ答えた。
「そんな型あるの?」次長は驚いたように私の顔を見ている。最近同じフロアの職員がインフルエンザに罹った。また他のフロアでも疑い有り、という人が出た日のことである。
今年に入って、私は職場で第一号のインフルエンザ患者になった。
幸い、新しい抗インフルエンザ薬が良く効いてすぐに熱が下がり、二日休みを取っただけで済んだ。
世間でもインフルエンザが大流行し、次長は支店で発生した患者数を本社に報告しなければならなかったのだ。
私と次長のやりとりを黙って聞いていた他の職員の人達は、どうやら途中で気づき、成り行きを見守っていたらしい。隣の席の同僚「違う違う、そうじゃなくて・・・」と笑いを堪えている。
私は自分の勘違いにやっと気づき、
「えっ?あっ、A型です!」と慌てて答えたが既に遅く、静かなフロアが笑いに包まれた。
「もう、僕が勤務中に女性職員の血液型を聞く訳ないでしょう!」と次長も大笑いしながら自分の席に戻って行った。
業務中に突然私の横に来て、“主語”も言わずに尋ねる次長が悪いのだ。
数日後、私の血液型がAB型であることが支店中に広まったのは言うまでもない。