第 3318 号2012.08.26
「 スカイツリー 」
加藤 智子(文京区)
「そり」と「むくり」の優雅さを
身にまとった貴婦人は 繊細な裾を翻し
地に下りた
江戸の町人たちが 小さな幸せを守る為に
流した涙や汗の滲み込む地 この町に舞い降り
天空に誘う鉄の箱を抱き
貴婦人は凛と立つ
天空制覇の野望
大空を思いのまま羽ばたく鳥類への憧れ
日々の退屈な生活からの脱却
生と死 人間の宿命の達観
様々な思いを秘め 肩と肩をぶつけ合いながら
鉄の箱に詰められた人々は
一瞬のうちに 天空の貴婦人の心臓部に
降り立つ
眼前に広がる古さと新しさが 混在する街に
穏やかに光る海に
どこまでも続く広き空に
声を上げ 跳び跳ね 一様に
貴婦人を讃える
貴婦人は あくまでも澄まして
かなた雲の中の眼で 淡々と
小さな人間達の 営みを
見つめる