第 3300 号2012.04.22
「 友情の庭。 」
由布子(ペンネーム)
朝起きて窓を開け、庭を見るのが近頃の楽しみである。春から夏にかけての庭は次々と花が咲き、心を癒してくれる。
私の庭に華麗な花はない。だから自慢できるほどのものは何もない。でも私が密かに自慢に思う花が数種ある。それは友だちから分けてもらった花たちだ。
紫色の「都忘れ」は20年も前に幼なじみが持参して植えていってくれた。白色のそれは英語の勉強仲間の家からで、薄紫のは義妹から。清楚なスズランは私が友にねだって届けてもらった。
友人のご主人が株分けしてくれた「君子蘭」はオレンジの花が咲く。気功の先生にいただいた薔薇の名はなんと「プレイガール」。
他にも宝着草、小手毬、シラン、きぼうし、百合、紫式部……これらの花はみな友の庭からのプレゼント。多年草なので多く手をかけなくても毎年咲いてくれるのも嬉しい。そして、もっと嬉しいのはこの花たちが私に「よき友を持つ幸せ」を感じさせてくれること。
家を建てた30年前、私の家の庭は殺風景だった。そんな庭を気遣って母が時々鉢植えにした花を持ってきてくれたことがあった。その頃、私は子育てと家事で花を愛でる余裕も無く、水やりを忘れ、せっかくの心づくしを枯らして母を嘆かせた。今、私はこの庭を亡き母に見せたい。花好きだった母はなんと言うだろうか。
「可愛い庭になったねー。いい友だちがいて、おまえは幸せだね」
そんな声が聞こえてくるような気がする。