第 3298 号2012.04.08
「 土筆のメモリー 」
スプリング(ペンネーム)
土手を車で走ると、親子連れが散歩しているのが見えた。
ああ、今年も土筆の季節がやってくる。土筆は私にとり、義父の味だ。
たまに夫と夫の実家へ遊びに行くと、義父は土筆の卵とじをよく作ってくれた。秋の自然薯と春の土筆の季節には、岐阜出身の義父が得意げに料理の腕を振るうのが、なぜだか夫の実家の定例行事のようになっていたのだ。
一時私が病気で元気がなかった時は、とりわけその素朴で控えめな味が、義父の性格とあいまって、体にしみわたった。言葉はなくても、土筆が「生きていて大丈夫だよ」そう言ってくれている気がした。そんな義父ががんで亡くなって、もう3年も経つ。身内だけであげた葬儀は夫の性格をよく現していて、今でもその時の夫のあり様を誇りに思う。
今年は私も土筆の卵とじでも作ってみようかな。まずは夫と土筆とりから始めないと。さあ、日よけの手袋と帽子でも買って、今度の週末あたり、二人で出掛けてみようか。