「 四角い贈り物 」
マロン(ペンネーム)
誰かに手紙を出すとき、とても大切にしていることがある。 それは、郵便局に行き、切手を選ぶことだ。
来る度に切手のラインナップが変わっており、一つ一つ、じっくり見ているとどれも個性的で、季節感に溢れ、生き生きとしている。これいいな、あ、こっちも欲しい、あれは記念にとっておきたい・・・
金子みすずさんの詩で、「みんなちがって、みんないい。」という言葉があるが、目の前の切手たちは、まさにその通り。 季節の花、各都道府県の名物をモチーフにしたもの、キャラクターもの、イベントものなどバライティー豊か。
そしてどの絵柄も、異なった色彩とタッチで丁寧に、一瞬の幸せを大切に閉じ込めるかのように描かれていて、“素敵”以外の言葉が見当たらない。
わずか親指大ほどの四角い額縁に閉じ込めた、小さな世界。 切手は、世界で最も小さく、最も夢に富んだ、旅をする絵だと思う。
そういう私も、以前は切手に思い入れなどなく、家にある余った切手を使ったり、コンビニで買ったりしていた。
しかし、イギリスに留学していた頃、日本にいる母から手紙が届いた。
その時ブルガリア人のフラットメートがその封筒を見て、感激の声を上げたのだ。
「まぁ!なんて美しい切手かしら!日本にはこんなラブリーな切手があるのね!私の国にはもう何年も変わらない切手が、いくつかあるだけだわ」
それを聞いて、ハッと気がついた。切手は、鑑賞されるものであることを。そして日本人がどれほど、切手に輝きを見出しているかということを。
それからは、相手の好みや封筒の絵柄との相性を考えながらの切手選びが楽しい習慣となった。切手はただ送料としてだけでなく、送り主からのささやかなプレゼントであり、お互いの心を柔らかく結んでくれる、温かい光。
とっておきの切手を貼り、そっとポストに入れると、いつも私の心はふわりと解きほぐされる。もうすでにあの人が、にっこりと笑みを浮かべているような気がして。