第 3277 号2011.11.13
「 生命の輪廻 」
T N(ペンネーム)
昨秋、黄葉の銀杏と赤葉の桜が
最後の一枚まで落ちた時
僕の母は逝ってしまった。
大正の始めから昭和・平成を経て
九十歳を越す天寿を全うした。
四月まで続く長い寒い冬が続いた。
今春、紅白の梅と桃白の桜が
一斉に咲き始めた時
僕の息子が結婚の宴をあげた。
白人の神父の祝いの言葉が教会に響き
披露の場は、ほのかで、たわやかな人々の交換
二人は祝いの人々に祝辞を貰い
新しい人生をスタートした。
異常気象の猛暑が長く続いた夏だった。
そして、母が逝って一年の晩秋の日
息子に新しい命が誕生した。
女の子で、僕にとっては初孫
今年も銀杏の黄葉と桜の赤葉が一雨ごとに
落ちていくが、今年は昨年とは違う。
生命はつながれた。季節の進行に合わせて
命はつながっていく。
そして三十年後、今度は僕達は孫に生命を
つないでいくのだろう。それはきっと、秋だろう。