第 3275 号2011.10.30
「 街路樹 」
吉川 佐知子(品川区)
四月 ケヤキ並木の原宿の通り
浅黄色の欅の葉が芽吹くころ
大きなガラス窓のある二階のレストランで
軽いランチをとるのが好きだ
窓いっぱいに若い緑が広がって
遠いやさしい昔を思い出させてくれる
梅雨のころ赤坂離宮の周りの道を歩くのがいい
ゆりの木の葉に隠れるように黄緑の花が咲く
雨の中愛くるしい地味な小さな花が咲く
いとおしくて悲しくて
蒸し暑いころは御茶ノ水のアテネフランセや文化学院の
通りを歩くのが何より楽しい マロニエの並木が
白い房の花を空に向かって堂々と付ける
そして私はパリにいるような浮いた気分になる
夏になる頃南平台の通りでは えんじゅが花をつける
白い小さな花びらがはらはらと歩道に降り注ぎ
おしゃれな人たちが足早に通り過ぎる頃
百日紅が取って代わって豪華なピンクの花を競う
秋はやっぱり銀杏でしょう
街中に金粉を振りまくように光り輝いて
白金のプラチナ通りは立ち並ぶお店のショウウインドウまで
金色にそめてしまう 木枯らしに襲われてしまうまでは