第 3271 号2011.10.02
「 鰹節削り器 」
霧島 ひさえ(入間市)
日が暮れだすと今日は何を食べよう・・・と思う。
そんなに品数は要らない、たくさんの量も要らない。
体が何を食べたがっているか。そんなことを考えながら冷蔵庫を開ける。
秋風が心地良い。スーパーの棚も、秋茄子、ピーマン、きのこ、ブロッコリー、小松菜、と食欲をそそる。
鰹節削り器を出し、カシャカシャと削る。亡くなった母が残してくれた削り器、古く刃も少し錆びてる。しかしまだまだ使える、いい音を出してくれる。ぷーんといい香りがしてくる。この音を聞くたびに、三年前に九十八歳で死んだ母を思い出す。母は父と結婚してから商売をしていたので住み込みの番頭さんとか小僧さんがいて、母はエネルギッシュに面倒を見ていた。土間があって薪でごはんを炊いていた時代です。1升くらいのごはん、鍋いっぱいのカレー、量は半端ではなかった。
そんな時小学生だったわたしは春になると、ソラマメを剥いたり、蕗の筋を引いたり、すこしはきまぐれにお手伝いをしていた。鰹節削り器は危ないと使わせてもらえなかったが、あのカシャカシャと言う音は心地よく今も耳に残っている。
今日は小松菜のおひたしにいっぱい鰹節をかけて食べよう。娘が川崎大師で買ってきてくれた鰹節はとても大きく引き出しに入らない、せっせと削って少しづつ小さくなっていって、削れないほどちびちゃんになったら、水につけておいて、だしをゆっくりととろうと思う。古いものを大事に、そしてゆっくりと食べ物と自分の呼吸とを合わせて体が喜ぶ食事を用意出来たらいいなーと思う。