「 銀ぶら 」
霧島 ひさえ(埼玉県入間市)
銀座は大好きで良く行く。一人の時もあれば、友人を誘ってのこともある。高校を卒業して最初の就職先が有楽町であって、思い出深い街であるのと、小さい頃神田に住んでいて、神田からは歩いても銀座に出られ、良く父に肩車をして連れて行ってもらった思い出も、「行きたい!」という原因の中に無意識に入り込んでいるのかも知れない。特にその頃の銀座は、今みたいに高級感はなく、極々下町っぽい街で、クリスマスの夜などは、紙のとんがり帽子をかぶって、クラッカーをならしたりしてとても自然の賑やかさがあった。新宿とか渋谷の繁華街とは違った、どこかしっとりとした感があった。 今は、銀座も様変わりして、外国のブランド品のお店が出来たり、デパートが林立して、思わず上を向いて歩いてしまうが、先日、久しぶりに友人と「銀ぶら」をしようと出かけた。大きな通りではなく、細い路地をぶらぶらした。新しいお店の裏にひょいとタイル敷きの路地があったり、昔からずーっと続いてる銭湯があったり、夏の夕方などには、柄杓で水をまいているのではないかと想像させるような、ひっそりと昔から住んでいる人達の暮らしの風景があったり、ビルとビルにおしつぶされそうになっているお稲荷さんがあったりして、歩いていると別世界に紛れ込んだような錯覚におそわれる。ひっそりと、えばってなく、それでも存在感のあるものが残っているのは嬉しい。歩き疲れた後、立て直されるという歌舞伎座の前を通り、その側のジョン・レノンとヨーコさんが銀座に来た時良く寄ったという店に入って、ひよこ豆カレーとコーヒーを飲んでおしゃべりして、外に出た時は、もう夕暮れていて、銀座の街とお別れしたが、行く度に又来ようという気持ちにさせる街である。銀座はイギリスのジョン・レノンにも似合う街でもあるのだろうか。