第 3243 号2011.03.20
「 旅への誘い 」
入江 由希子(練馬区)
「ここではないどこかへ」という憧れは多かれ少なかれ誰の心にもあるだろう。旅好きの友だちは身軽に世界のあちこちへ興味の趣くままに旅をしている。そして、旅先から届く絵はがきは、まるで一緒に旅をしているようなそんな感じを味わうことのできる楽しい便りだ。
私が旅をするのはもっぱら本の上。自分の想像力が旅のパスポートかもしれない。地図を広げ、旅行ガイドを読み、小説の世界と重ね合わせながら、いつしか本の上の旅人となる。
旅する世界はベニスにダブリン、インド、ロンドン、ギリシャやモロッコ、チベットと気まぐれな読書のせいか、場所も時代背景も様々だ。本の旅人の場合は、エコノミー症候群の心配もない。ブランド物のお土産を買うことはできないけれど、気ままなひとり旅は本の上とはいえ楽しいものである。
しかし、そろそろ私もバーチャルではなく、本物の旅へと出かけたいものだと思い始めている。面倒なことも乗り越え、行ってみれば、言葉では言い表せないほどの感動もあることだろう。空港への道のりも、長時間のフライトも、慣れない土地も、食べ物や飲み物だって、何もかも冒険みたいで愉快になるだろう。
旅をより深く味わって豊かにする秘訣を尋ねたら「ゆっくり旅をする、カメラではなく自分の目で見る、人見知りしない。」というのが友人の即答であった。旅の実りが豊かであることは人の内面においても豊かな実りとなることだろう。旅立つための良い風が吹いてくれる時を、待っている私だ。