第 3231 号2010.12.26
「 銀座ランチ 」
永 野 真 弓(東京都北区)
『明日銀座にいくよ又ランチしよう』そんなメールを送るのが毎月の恒例となっている。ずっと年賀状だけの間柄になっていたOL時代の古い友人Rちゃん宛だ。
私たちが交流を再開する事になったのは一枚の喪中葉書がきっかけである。同じ仲間のYちゃんが亡くなっていたのだ。ショックだった。まだ私たちアラフォーである。このやるせない気持ちはRちゃんとの再会をなくしてはどうにも収まらない。
そうだ彼女のオフィスは銀座だ。お昼休みなら短いながらも気兼ねなく平日の昼間会えるだろう。
数日後Rちゃんおすすめの銀座の和食ランチに舌を打つ。10年振りの再会だったが昔と何も変わらない。
亡くなったYちゃんの思い出話にあっという間に時間が過ぎる。
Yちゃんの人なつっこい笑顔やクルクル動く綺麗な瞳が目に浮かぶ。
『こんな事になるならもっと私達会っていたかったね…会おうと思えばいつでもあえたのに…』悲しみと後悔がチクリと胸に刺さる。
以来毎月、生きる道も目指す未来も違う私達が月に一度一時間だけクロスする。Rちゃんは彼氏との生活を大切にする独身貴族。私は思春期盛りに手を焼く専業主婦。生きている道が全く違う私達なのだ。共通の話題は少ないがお互い1ヶ月ので出来事や情報交換だけでもあっという間に時間は過ぎて行く。
『そろそろ時間だね。今日も楽しかった。また来月ね』オフィスビルに吸い込まれていくRちゃんと私達を再会させてくれた天国のYちゃんにそっとつぶやく。『ありがとう…またね。』そして私はみゆき通りに向かってゆっくり歩き出した。