第 3218 号2010.09.26
「 石鳥居 」
半田 亨雄(広島市)
海上にそびえる大鳥居の
あでやかな朱とはうらはらに
花崗岩の 灰色の岩肌をさらしたまま
ひっそりと石鳥居は 松の並木に埋もれて参道に立つ
秋の初めの陽射しを逃れ
柱のかげに身をよせて てのひらをおしあてる
・・・ひんやりとして
「地底に吹いている 風に 触れたのでしょうか」
たしかにお前は大地の底で生まれ
この地上に生を受けた
ふと見上げた空にヴェールをかけた 松の枝葉
に 埋もれるように紅葉の一枝
かすかに
色づき始めている その隙間の
彼方には空の 青
ここは
地底と天空をつなぐ扉にちがいない
こころに 風が
吹き抜ける