第 3216 号2010.09.12
「 ヒガンバナ考 」
森 油花(横浜市)
子供の頃、「好きな花は?」と聞かれ、「ヒガンバナ」と答えたことがある。
沈黙の後、「面白い子ね。」と言われた。
墓参りについて行くと、墓地の横のお地蔵様の周りに真っ赤な花が密集している。どうしても欲しくなり一本失敬したら、こっぴどく叱られた。しかも「縁起でもない。」「罰が当たる。」と心外な言葉を浴びながら。
こんなきれいな花なのに、何という言われようだと、子供心にも思ったものだ。
さて、月日は流れ、自身の結婚式にて。好きな花で花束を作ってもらうのだが、私の指名はグロリオサという赤い百合。
ところが夫に「それ、ヒガンバナ?」と言われ、失笑してしまった。私はどうもこの手の花が好きらしい。
ヒガンバナのブーケ、案外いけるかも。でも花屋に置いていないから作れないなあ、と冗談を言って笑った。
次の彼岸は、夫と墓参りに出かけた。そこで私が目にしたものは、何と純白のヒガンバナだった。
これは正真正銘、百合よりも美しい!と興奮気味の私だが、共感してくれたのはお地蔵様だけのようだった。