第 3213 号2010.08.22
「 幕間 」
横山まり子(ペンネーム)
一つの季節が終わる頃の、あの物憂いセンチメンタルが好きだ。
特に夏の終わり。丈高い向日葵もうなだれて、ロダンの彫刻『カレーの市民』を思わせるし、散歩道に点々と落ちた蝉の死骸や、咲き呆けてめっきり花数の減った百日紅も、あれほど燦然と輝いていた夏の、凋落の一こまだ。
しかし、短いながらも生を謳歌したものたちの安らかな充足感が、そこかしこに立ちこめている。
まだ睫毛の間に引っかかっている、すでに思い出となった夏の結晶を、少し斜めになった陽光がきらめかせる。
この宴のあとのような静けさほど、人生が束の間のものであることを、優しく思い起こさせてくれるものはない。
光と翳がさまざまに形を変えて私の中をよぎる。喧噪と静寂。追憶と忘却。終焉と新生。
毎年この時期になると、私はただ時の流れを受け入れて、それを透過させる物体にすぎなくなる。
初秋が爽やかに訪れるまでの短い期間を、私はそうやって過ごしているように思う。