第 3185 号2010.02.07
「 雪見舞い 」
岡 村 愛 子(山梨市)
夫の友人が住む里は長野県栄村。一躍有名になった村である。
先日、ガラス越しに汗ばむほどの陽射しを受けながら、遠く栄村に想いを馳せつつパン作りをした。
朝晩のニュースはもとより、時々電話で話す夫が彼の地の積雪のすごさを伝えてくれてはいたが私に出来ることはないものか…。
そこでパン作りとなった次第である。
ピザとチーズスティックの発酵を待ちながら、いただきものの可愛らしいタオルを箱に入れてみた。ウン、これは雪おろしの汗拭きに受けるかも知れない。未開封のコーヒーもあった。これはパンの友として香りを楽しんでいただけますように。そして桜の塩漬けはこぶ茶を添えて一足早くに春の気配を…と。
名付けて「雪かき緊急物資」、受けるかなぁ。
数日後、栄村の友より荷物が届いた。
目に入ってきたのは桜。「エッ?桜?」
雪で倒れた桜の枝を家の中で育てたのだそうで白い可憐な花は驚きとともに静かに食卓で私たちを楽しませてくれている。
そして今日、桜に守られて届いた美味なる御飯と漬け物、クルミ入りお餅で食事をしながら新聞を読んでいると、「互いに交わす雪見舞い」という記事が目にとまった。
昔は雪のころになると雪見舞いの贈答歌がやりとりされたのだそうだな。
「雪見舞い」…。何てやわらかい言葉なんだろう。初めて知った。
見舞い、見舞われ、人がいることの幸い。
春は確かな足どりで、すぐそこまで来ている気配がした。