第 3180 号2010.01.03
「 美術館のカレンダー 」
斎 藤 雅 子(荒川区)
今年のお正月のことでした。松飾りをはずしたあと、郵便受けのなかをのぞいたら、筒状の郵便物が届いてました。なんだろうって、不思議に思いながら手元に引き寄せてみると、「カレンダー」と表記されていて、送り主に目をやると、たしかに存在する美術館の名前がそこに。なぜ、私のもとに?と、不思議な気持ちがおさまらないまま、なかをあけました。カレンダーを送り状が入っていました。
「ご当選、おめでとうございます」と始まるくだりから読んでいくうちに、やっと思い出しました。昨年末、家族の年賀状をせっせと書いていたとき、新聞紙上に掲載されていた「美術館のカレンダー」プレゼントへの葉書も書いていたのでした。今度はうれしさがこみあげてきました。
カレンダーをぱらぱらとめくってみると、淡い色調の花たちや庭園を描いた、印象派の作品が月別にずらり。その優美なおもむきに、目を奪われてしまいました。すでに新年度のカレンダーは、買って壁に掛けていました。数字だけ埋まっている実用一点張りのもので、見やすいけれど、ちょっと味気ない。さっそく、美術館のカレンダーにかけかえました。
早いもので、カレンダーが届いてから、半年以上が過ぎました。あっというまでした。今年も昨年と同じように、忙しない毎日に追われています。けれども、そのあいだに、何度美術館のカレンダーに心が洗われたことでしょう。その優美な存在に。それだけでなく、美しいものに触れることの喜びまで思い出させてくれました。
小さな幸運を頭の片隅で感じながら、今日も美術館のカレンダーにしばし目をあずけて、一日が終わりました。