「 愛はソウルから。 」
gekoちゃん(ペンネーム)
昨年の暮れから我が家に来ていたチョンヒ(韓国の知人の娘)がソウルへと帰っていった。空港に送ったとき、涙で泣きはらしたチョンヒをまっすぐ見ることが出来ず、早足に空港を後にした。
あっと言う間の10日間だった。来日したのが一番忙しい時期だったので、来る早々大掃除を手伝うことになった彼女だったが、嫌な顔ひとつせず、終始にこにこと家事を楽しんでくれた。
思い出をあげれば数えきれないほどだが、心優しく明るいチョンヒの笑顔に、私たち家族全員どれだけ和まされたことだろう。誰かがミカンを食べようとすると、すぐ皮をむいてくれる、菓子をつまもうとすると、ティッシュボックスからティッシュを一枚取り出し、ささっとたたんで手渡してくれる。遠出して疲れて帰ってきても、私や私の両親のことを気遣ってくれ、お茶を入れてくれたり肩をもんでくれたり、本当に気がつく子だった。
そんなチョンヒが一番喜んでくれたのは、サプライズパーティー。
ちょうどチョンヒの誕生日が近かったので、2日早いパーティーをしたのだ。と言っても彼女には内緒で、ゲームをしようということで、チョンヒにアイマスクをかけさせ、その間、隠しておいたバースデーケーキを出してろうそくをつけ、部屋中の電気を消した。アイマスクをとった時の、チョンヒの驚きの顔は忘れられない。韓国語でカードを書き、夫、私、息子3人、それぞれがささやかなプレゼントを渡したとき彼女は涙を抑えきれず、トイレへと駆け込んだ。
そして、帰国の日。飛行機は午後の便なのになんと4時半に起きて部屋中を、(台所やお風呂からトイレまで)ピカピカに掃除して、帰っていったチョンヒ。今、彼女のいない部屋はがらんとしている。またそのうち、いないことに慣れてくるだろうが、今は切ない。「オンマー、ただいま~!」の声が今も聞こえてきそうだ。
ありがとう、チョンヒ また帰っておいで。