第 3168 号2009.10.11
「 七十才 」
白 石 裕 子 (千葉県稲毛区)
庭の小菊が咲きはじめた。色とりどりの可憐な花を部屋中に飾り、小さな秋を満喫している。
空は抜けるように青く、風は爽やかに通り過ぎる。良い季節である。
朝晩は冷え込み、冬の足音が聞えてきた。
まもなく今年も終りが近い。
八月末に七十才になった。七十なんて、とんでもない。私はまだ若いのよ、と開き直る気持と、この先どの位の時間が残っているか焦りのような気持ちが交錯している。
でも、月日は容赦なく束になって飛んで行く。現実をしっかり見て、今迄続けてきたことを継続していくしかない。
手仕事が好きで、編物、造花を若い頃から続けている。手を動かすことは脳の活性化につながり、ぼけ予防にもなるらしい。視力が落ち、悪戦苦闘しているが好きなことは、なんとか頑張れる。
十年目に入ったリズムダンスも、もう少し続けることにしよう。
最近、新しくスクエアダンスの講習に通っている。男女八人で四角になり、ビートのきいたウエスタン調の曲に合せて踊る。
衰えた脳をフル回転させ、軽やかに体を動かし、適度の緊張感が心地良い。
老人、老女、老境、なんて言葉がぴったりな年令になってしまった。しかし考えようによっては、とても素敵な年令なのではないだろうか…。
ひと通りのことは経験済みであり、どの年令の気持も良くわかる。だから、優しく寄り添うことができる。
こんな柔らかな気分でなら、恋愛も結婚もそして子育ても、もっと上手に出来たのに…。
青い空をぼんやり眺め、小菊の香りを楽しみながら、そんなことを考えている。