第 3166 号2009.09.27
「 風の駅 」
川 原 良 昌 (北海道富良野市)
いつごろからか駅は寂れた
待合室も周りの空き地もがらんとして
いつも同じ風が吹く
草むらに誰が乗り捨てたか
自転車が一台
山と川とに囲まれて
ぼくらの村の小さな駅は
坂道を上がったところに
ポツンとあった
小さくても駅
朝夕の人のざわめき
心はずむ列車の響き
駅は村のみんなの拠り所
坂を下りて
「待合」と呼んでいた駄菓子屋から
鉄道の長屋の横を走る砂利道
乗合バスはいつも満員だった
時を刻み時代を超えて汽車は走り続け
やがて蒸気機関車は郷愁の煙となって消え
過疎に悩む村が吐息をつく度に
駅はひっそりと年老いて風の駅となった
放置された自転車の上
赤とんぼが一匹止まっている