第 3161 号2009.08.23
「 煙草と飴と 」
たちばな ゆき(ペンネーム)
昔、哲学者達が議論したというそのカフェは、猫がのっそりと歩き、お気に入りの場所らしきところに悠々と寝そべる庶民的な店だった。
でも道行く人々を見ながらお茶を飲めるオープンカフェは、やはりパリっぽい。
平日の朝、パリのカフェで簡単な朝食・・。普段なら駅への道を、早足で歩いている時間。とても久しぶりの優雅な一日。
ぼんやり道を眺めていると、通りかかった男性にすれ違いざま、女性が声をかけた。「煙草の火、ありますか?」。男性がすっとライターに火をつけて差し出す。「ありがとう」「どういたしまして」。
ほんの一瞬のコミュニケーション。
日本の都会ではありえない風景をみたような気がして驚いた。
見知らぬ人に、それも朝の出勤時間、煙草の火なんて。日本だったら、ほぼ確実に「非常識な」という反応が返ってくる気がする。
私は正直に言えば、煙草は好きじゃない。だって煙草の煙がない方が食事だって美味しいし快適だ。もっと禁煙の場所が広がればいいのにと思っている。でも、同じ街に住む、見知らぬ人同士のこの一瞬のコミュニケーションはいいなぁと心に焼き付いてしまった。
「煙草もいいじゃない?」。
この話を関西の友人にしたら、こんな反応がかえってきた。
「大阪のおばちゃんは、いっつも飴を持っていて、ちょっと隣り合わせたりした知らない人達にくれたりするんだよ。」
あ、その方がいいかも。飴なら煙もないし、美味しいし。
結論、私的にはパリより大阪・・かな。