第 3158 号2009.08.02
「 夏の夜に 」
喜多野 眞理(ペンネーム)
蚊取り線香を久しぶりにつけてみた。
何年も前に買っておいたもの。
ひょっこり箪笥の中から出てきた。
なんどかのチャレンジの後、
ちゃんと火がついて、
オレンジ色の焔の剣先が鈍く温かく光っている。
ゆっくりゆっくり立ち上がる煙の先を
ずっと目で追っていた。
あの先の
煙がかき消えてしまうあの先のどこかに
私の想いが届くでしょうか。
ほろっと落ちる燃えかすに
夏の終わりを感じながら。
線香のしみるような香を吸い込みながら。
うんと寂しい夏の夜のこと。