第 3144 号2009.04.26
「 私のお守り 」
田中 寿子(岐阜市)
五月に入り、整理箪笥の中身を薄手の物に入れ替えたついに、
滅多にさわらない和箪笥の上置きも整理することにした。
そして小抽出しを開けたとたん
「あっ、お父ちゃん」
と思わず呟いた。
父の住所、氏名、生年月日、複数の連絡先などを墨で書いた縦15センチ、横10センチ位の白い布を見つけたからだ。丁寧に毛筆で書いて渡したのは、父が七十代の半ば頃であったと思うが父は平成元年に79才で亡くなるまで後生大事に持ち歩いていたらしく、病院で亡くなった時もきちんと畳んで財布に入れてあった。
処分するに忍びず、私は弟の了解を得て持ち帰り、貴重品を共に箪笥の上置きに蔵ったのだ。普段は全く忘れているが、何年かに一度ここを開けるとこうして現われ、父に再会した思いで手に取り、思い出に浸ったり、いろいろ語りかけるのだ。
父はこの小さな布の中で見守り、励まし続けてくれるような気がする。
今では私の大切なお守りであり宝物だ。
「元気で頑張っています。安心してゆっくりお休み下さい」
と丁寧に畳んで再び元の場所に納めた。