第 3134 号2009.02.15
「 レモン 」
石川 さとみ(品川区)
スーパーで初めてレモンを買った。紅茶に入れたらおいしいかなとふと思い立ったからだ。喫茶店に行ってレモンティーを頼めば、ごく自然と付いてくるレモン。レモンティーにはレモンは当たり前だけどなぜか紅茶のためにレモンを買おうとは思ったこともなかった。めったなことがない限り手に入れない食材のひとつだ。レモンを買おう!と思い立ってからも4、5日毎日のようにレモンを買うのを忘れたくらいだ。今日こそはと、春一番の吹く休みの日、レモンのために気合いを入れてスーパーへ向かった。
レモンだから果物だろうと果物コーナーを探してみる。けれどレモンらしき物が見当たらない。あれ?あれ?そんなにみんな買わないからないのかな、それとも旬でないからかな?もしかして売切れ?いろんな思いが一瞬にして頭の中をかけめぐる。会えない時ほど会いたい気持ちがつのる。ドキドキしながら果物コーナーを2回りくらいしてもレモンは見当たらず。レモンエキスで我慢するしかないかとあきらめかけたその時、野菜コーナーに黄色い丸いものが見えた。「ゆず」もしかしたら?とゆっくり目で周りを見ると「レモン(国産)」の文字。出会えた!嬉しくてたまらなかった。こんなにレモンのことで一喜一憂するとは思いも寄らなかった。
晴ればれとした気持ちで家に帰り、さっそくレモンを切り紅茶に絞って入れてみた。「おいしい。」自分で探して自分で切ったレモンを入れた紅茶がこんなにおいしいなんて。ただそれだけでとても幸せな気持ちになれた。
レモンさん、今までごめんね。