第 3133 号2009.02.08
「 チョコレートがゼロとなる日 」
仲 途 帆 波(ペンネーム)
バレンタインデイで女性から頂くチョコレート、何歳になろうが嬉しいというのが正直なところである。男ってやつは、多分に見栄で生きているところがあるので、女性からみれば男のカワイイ一面だという。
私は何年か前にリタイアし古稀も過ぎて、バレンタインデイには年々縁が薄くなっている。しかしそれでも去年までは、義理チョコの2個や3個はプレゼントされていたのだが……。
全くの偶然だがその日は、地元の老人養護ホームで毎月ボランティアしているハーモニカ演奏の当日だった。数年前からクラブのメンバー7~8人で、童謡や唱歌、懐かしい歌謡曲など12~3曲吹いて、お年寄りたちに喜ばれている。
いつも通り、♪うさぎ追いし、かの山~♪(故郷)で演奏を終え、控室に戻り帰る支度をしていると、係の女性がみえて言う。
「お疲れ様でした。なお今日はバレンタインデイです。お年寄り達も喜びますからご一緒にチョコレート・フォンジュを召し上がって下さい」
大広間に戻ると机の上には、串に刺したイチゴ、りんご、パンと溶かした温かいチョコレートが置かれていた。「それでは、チョコレートを付けてどうぞ」
初めてのチョコレート・フォンジュは美味しかったし、心遣いも心に沁みた。
一足違いで帰っていた女房が、アーモンドチョコレート一箱を私に差し出す。今年あたり遂に途切れそうな気配に、どうやら同情したと思われる。
車で一時間ほどの所に嫁いでいる娘から、夕方メールが入った。
「バレンタインのチョコは、今度行ったときに渡すね!」
母と娘、考えることはよく似ているようだ。