第 3132 号2009.02.01
「 旅で出会った青年 」
佐藤 由紀子(千葉県柏市)
今年は主人の退任記念で、ニュージーランドへ旅した。行事の
たてこんでいる今年より来年でもいいんじゃない?という私に、記念の年だからどうしても行こう!と説得され、それなら、と奮起してビジネスクラスで行くことになった。幸いに天気にもめぐまれ、どこまでも続くカンタベリー平野の美しさや、マウントクックで産まれて初めて南十字星を観ることができたり、ミルフォードサウンドの荘厳さなどどれも筆舌しがたい美景に、私たちは感動の連続。そんな中、私たちは背のスラリとしたひとり旅の青年と出会った。聞けば、三年勤めた会社を退職し、再就職の合い間にニュージーランドへ来たという。ちょっぴりシャイで、それでいて話せばしっかりとした自分を持っている好青年だ。私たちと世代も違うのに気持ち良く接してくれた彼に、旅も終りに近づいてきた頃、主人が名刺を渡した。就職決まったら連絡しなさい。
銀座でごちそうしてあげるから。ちょっとびっくりした彼はそれでもありがとうございます、と言って受け取った。それから一ヶ月程たった頃、彼からメールが届いた。いずれは正社員として勤めたいが取り合えず派遣で働いているとのこと。私たちは早速銀座で会うことになった。ワインバーで美酒に酔いしれながら旅のリマインドをして、しばし楽しい時を過ごした。その夜、帰ってから早速彼からメールが届いた。そこには感謝の言葉があふれていた。私たちも何かいいことをしたような気分になり嬉しかった。
旅で出会った若者と再会するということに多少の戸惑いはあったものの、人と人との出逢いを大切にするという意味ではやはり人を信じることから始めなければならない。この先のことはわからないけれど、彼の行く末を見守ってあげるのも悪くないかな、なんて思っている。