第 3129 号2009.01.11
「 さっぱりもしたいけれど… 」
吉田 桂子(文京区)
生まれ変わって男か、女か、選べるとしたら、即座に「女」と
答える。男に生まれたら、利点は山ほどあるだろう。頑張っている女の人には申し訳ないが、地位や名誉がなくても結構楽しく気ままでいられる女の立場に居心地が良いのも本音でる。
それなのに、わがままな私は男性がちょっと羨ましい時がある。
スポーツの合間、ザブザブ水しぶきを飛ばして顔を洗い、タオルで拭く。コマーシャルのようなあの瞬間。化粧していないからできる男の特権。
一月のある日、日帰りで山歩きをした。都心から電車で一時間半離れただけなのに、ところどころに雪が残り、空気は肌をさす冷たさだった。それでも歩き始めると、駅から続くアファルトの道が山道に変わる頃には身体が少し汗ばんできた。急登になり、ハアハア息を切らせて一歩ずつ足を運ぶ。今日は山を下りたら温泉に入れる。もちろん冷えたビールも待っている。
汗を流した後に入る温泉は本当に気持ちよい。でも、今日は日帰りなので湯上がりに化粧をする。身だしなみ程度の簡単な化粧だけれど、この時ばかりはスッピンでいたいと思う。私が風呂場を出ると、男たちは湯上がりのさっぱりとした顔でもうビールを飲んでいた。
わがままな女はさっぱりもしたいけれど、鏡の中の自分を確認し、化粧というバリアも張らないと気持ちが落ち着かない。
今日も輪郭がぼやけてきた顔のパーツにリッキドでアイラインを入れる。目尻は上がり気味に…。