第 3126 号2008.12.21
「 「美しい声」とは 」
K.H.(ペンネーム)
先日、私は自宅近くの路上で、今思い出しても顔が緩んでしまう程のうれしい出来事に遭遇しました。私は一人の初老のご婦人に買い物途中の足を止められ、道を尋ねられました。何処をどのように説明したのか覚えていないのですが、つまりそれ程ごくありきたりに簡単に応答したと思うのです。ところが別れ際に、何とその方は「ひととき美しい声を聞かせていただいて、お蔭様で心が和みました。」と言って下さったのです。思ってもみなかったお礼の言葉に驚いて赤面した私でしたが、その日は一日中とても晴れやかで幸せな気分に浸ることができました。
やがて私は、「美しい声」という言葉の意味を考えてみました。
すると、その方はほんの僅かな間に私がその方に向けた、相手を気遣って思いやる気持ちをそう表現して下さったのかもしれないと思えてきました。
最近は、すれ違い様の自転車に道を譲っても一言もない、マンションのエレベーターで顔を合わせた住人に挨拶しても返事がないといった、寂しい無言の場面が少なくないように思います。電車内で黙々と携帯のメール打ちに興じる人達は、いつのまにか他人と目を合わせ、声を発して気持ちを交換することが苦手になってしまったのでしょうか。
私がそうであったように、お互いが幸せな気分になれる「美しい声」が、もっとさりげなく町のあちこちで聞けることができたらいいのにと思いました。