第 3123 号2008.11.30
「 ゆめ 」
薄 井 利 予(ペンネーム)
滑るように流れてゆく時
焦りもなく
飽きることもなく
身をゆだねて
ゆっくりと目を閉じる
忙し過ぎた日々を嘆くことも
行く末を憂うこともなく
求める眼差しを懐かしむことも
耳に優しい呼び声を待ってもいない
窓の外は真昼の陽射し
ゆるゆる動く大小のクレーン
天へと伸びてゆくビル群
緑の鉄橋も古びた工場も
向こう側に消えていった
炎天下に働く人々の濃い影が
まだ骨格だけの建物に揺れる
激しく動く若い時間
あそこにはまだ思いがけないことがある
ここは変わることのない小部屋
風も音も熱すら消えた真昼
わたしの時が動いていることの証に
懐かしい歌を歌おう
吠え続け嘆き続けた時への鎮魂歌
あの日々も確かにわたしのものだった
長旅の末に聞く優しいささやき
ごくろうさま、もういいよ、ゆっくりおやすみ
ありがとう
ただ、このまま
和みながら
朽ちる