第 3113 号2008.09.21
「 ようしゅやまごぼうの思い出 」
金 森 一 子(名古屋市)
先日、デパートへ行った時のことです。
地下の和菓子売り場を通りかかると、柱にかけられた花瓶に、紫色の実のついた植物が生けられていました。
「おやっ」と、思わず足が止まりました。
何だか急に、懐かしさが込み上げ、胸が熱くなるのを憶えました。
以前、見た記憶はあるのですが、何という名前のお花だったか思い出せませんでした。
そのまま通り過ぎることができず、お店の若い店員さんに、この花の名前を尋ねると、頭を傾げ「わからないのですが潰すと、紫の汁がでます。」とのこと。
もしかしたら、ヨウシュヤマゴボウかしらと、家に帰り調べたら、やはりそうでした。
この花(実)は息子が小学1年生になった時、秋の草花として理科の教科書に紹介されていて、春の草花である大犬のふぐり、と共に、息子が最初に覚えた植物でした。
当時の息子が甦り懐かしさがこみ上げました。ヨウシュヤマゴボウ、という発音しやすい長さと語感で、明るく楽しそうに連呼していた記憶があります。
その息子も今では32歳ですから、このヨウシュヤマゴボウとの出会いも25年ぶりということになります。
現在、息子達も独立し、我が家は夫婦2人だけの生活になりました。
山に行けば、そう珍しくないであろうこの植物が、偶然通りかかった和菓子屋さんで、その花の雰囲気に相応しい姿で飾られていたこと。そして何気なく通りかかった私の目がそれに吸い寄せられたこと。その2つの偶然が、私達家族の原風景を思い起こさせてくれ、懐かしい時間を与えてくれました。