「 月下美人 」
森 芳 江(板橋区)
「今年は豊作だった」と、呟きがもれた。
自宅にある2鉢の月下美人が12個の蕾をつけた。一斉に咲いたときを想像したら心臓が早鐘を打った。ところが、蕾が4cm位のときに4個落ちてしまい8個になった。
蕾が日に日に膨らんで開花の日を迎えた。昨年は5個だったが今年は記録を更新したことになる。
私は毎年「開花ショー」と称して友人をよんで一夜限りの花を観賞しながら、おしゃべりの花を咲かせる。今年は、生まれて初めて見るという友人が「香りも花も上品ね」といい、その豪華な花の姿にウットリしていた。
月下美人を育て始めたきっかけは6年前、スイミング仲間の友人宅にお邪魔したときに、窓際に大きな鉢植えがあった。「これは何の花?」と聞いたら「月下美人よ。一晩だけの花だけど香りもいいし花もみごとよ」という。花の名前は聞いたことはあった
が見たことはなかった。ほしいなあと思った。そんな私の顔色を
キャッチした友人は「来年株分けしますよ」といった。そして、翌年初夏に50cmに満たない株を届けてもらった。
友人は「今年は無理だけど早ければ来年の夏には咲くかもしれませんよ」と言った。
そして、翌年8月初旬に友人が言ったとおり、蕾を2個見つけたときはワクワクした。毎日ベランダを覗いて蕾の様子を確かめるのが日課になった。8月30日、その日がきた。夜8時過ぎてから花びらが開きだした。まるで貴婦人がゆっくりと話かけているような様子だった。9時を過ぎた頃、きれいに開花した。程よい香りが部屋に漂って至福のひとときだった。
花をバックに写真を撮った。それをポストカードにして、株を分けて下さった友人に郵送した。すると「素敵な報告をありがとう。FAXでなく、スナップショットがとても粋です。私もこれから真似をします」と、とても喜んでくれた。
花が取り持つ縁で、うれしい言葉にも出会い、ネットワークが広がったことを大切にしたい。