第 3106 号2008.08.03
「 レシート 」
浅 川 奈 津(ペンネーム)
「あらっ?」
何か本の間に挟まっている。
一枚の紙きれだ。
「なんだ、これ?」
よく見ると、レシート。
この本を買った時のものみいたいだ。
レシートの日付は、96年8月3日。
「うわぁ、古っ!」
なになに、今から十年以上前の96年8月3日は土曜日だったのか。
時間は11:54。
お昼ギリギリじゃない。おなかペコペコ状態でこの本を選んだわけ?
本屋さんの名前は「○○堂書店」。
へぇ、そういう本屋が足立区にあるんだ。
なんかおもしろい。
私はこの本を古本屋でみつけた。とても安かったので買う気になった。でもその中に最初の買い主さんのレシートが入っているなんて。ビックリ、そしてちょっとワクワク。
この本の買い主はきっと男だと推理する。
だって女の子はレシートを本に挟んだままにしたりしないもの。
男で、しかも若い子。学生か会社員。絶対独身。本の内容からしてそう思う。
夏休みか休日の午前中、ヒマがてらブラブラ散歩しているうちに暑くなり、ふらりと涼みに入った近所の本屋でこの本を買った!
でも…。レシートが挟みっぱなしになっているってことは、彼は読まずに部屋の本棚に置き忘れたまま年月は流れて、結局古本屋に売ったというわけかしら。
なんという切ない結末。
レシートをもう一度よく見ると、本屋の電話番号がある。今でもこのお店あるのかな?
かけてみようか、この本がピチピチの新人で陳列されていた時の○○堂書店に。
よし、かけてみよう。本の里帰りだ。
呼び出し音がなる。そして…。