第 3104 号2008.07.20
「 パートナー 」
奈 津 玲 子(ペンネーム)
我が家の庭に母猫が子猫を連れてきて、そして置いていった。
一人暮らしの勤め人に猫は飼えない。とりあえず名前だけは付けようと弥勒と名付けた。正月は共に過ごしその間に貰い手を捜そう。自分も眠りに帰るだけの家ではないか。飼えない理由を数え挙げ里子に出した。
ところが、貰われて三日目に「逃げ出してしまった」との電話があった。
大家族の誰にもなつかなかったらしい。
それでは捜しようがない。私の声しか聞き分けられない。
川越まで捜しに出かけた。
電柱にポスターを貼り、道行く人にチラシを配り、探し疲れて帰ろうとして振り向くと弥勒の声がした。
抱えてタクシーに乗った。咄嗟の判断とは不思議なもので飼えない理由と財布の紐は緩んだ。
「なぜ里子に?」
「淋しかった!」
一晩中ムニャムニャ話す弥勒に私は涙が止まらなかった。
先方のお宅に謝罪の電話を入れ猫を引き取りあれから二年が過ぎた。
弥勒は菩薩のような微笑をくれる私のかけがえのないパートナーとなった。