第 3102 号2008.07.06
「 雨 」
KAGANE(ペンネーム)
雨が好き 雨の日が好き
駅から歩ける距離の学校に通うあの人も
雨の日だけは私と同じバスに乗る
どこの誰かも知らない けれどもいつしか惹かれていた
雨模様の空を見上げては
あの人に会えると心躍らせた 幼い私の恋
「見かけなくなった?」
「この3月で卒業したのかもしれない…」
ある日を境に姿を見せなくなったあの人
いつかこういう日が来る わかってはいたけれども
寂しくて 切なくて たまらない
あの人に会えない雨の日を いつしか私は嫌いになっていた
あれから何年もの月日が流れて
今また私は
雨が好き 雨の日が好き
休日は仲間たちとの草野球と決まっているこの人も
雨の日だけは私と一緒に家にいる
何をするでもない 何を話すわけでもない
深くソファに身を埋めて
ふたりそれぞれ 膝の上の本に目を落とす
「いつ止むのかな」
「今日は1日中降るって言っていたわよ」
ときおりそんな言葉を交わすでけで
あとは黙って お互い別々の世界に浸ってしまう
穏やかで 安らいだ ひととき
静かな時間が流れて行く たまにはこんな午後もいい
だから私は
雨が好き 雨の日が好き